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[本の感想] 太陽を曳く馬

 

惨劇の部屋は殺人者の絵筆で赤く塗り潰されていた。
赤に執着する魂に追縋る一方で、合田は死刑囚の父が主宰する禅寺の施錠をめぐって、
僧侶たちと不可思議な問答に明け暮れていた。検事や弁護士の描く絵を拒むように、
思弁の只中でもがく合田の絵とは? (新潮社)

高村薫の本を読むのはこれが初めて。
この「太陽を曳く馬」は合田雄一郎シリーズの1つだそうだが
たぶん他の合田雄一郎シリーズとは少し毛色が違っていると思われる。
なんというか聞き込みだけで物語が終わった感じだ。
合田雄一郎はほとんど聞き役である。

2つの事件が起こった。
両者になんらかの共通点があるわけではない,関係者は共通だが。
2人の人間を殺し静寂の中で1つだけ絵を書き上げた絵描きの事件,
寺で起こった僧侶の事故死の再調査。
スポットがあたるのは2つに事件の当事者達の動機・意思である。
動機,主体・我の問題と言い換えてもいいが
それを宗教でどう扱うかこれがこの話のキモとなってくる。
事件はもう社会的に,法的にほぼ解決されている。
普通の刑事ものにあるような意外性のある動機ではない。
仏教という思想の中で語られる動機なのだ,
宗教的な動機だからそう考えれば意外か。
でもこう言えば自爆テロみたいな動機も含まれるし言葉足らずだ。
社会経験的動機でなく思想的動機。
思想,本書では禅宗(曹洞宗)をメインにして
大乗仏教それが生まれたインド思想
そしてオウムの思想が論じられる。
この問答がたまらなく面白い。
日本で仏教関連の啓蒙書を読むと倫理的な面に重きを置かれている本が多い。
本書でも言っているが要は八正道から導き出される倫理が日本の仏教には表層に表れている。
ありがたやありがたや仏様,これが世間の仏教だ。

でも違うのだ。
仏とは何なのか。
経典とは何なのか。
悟りとは何なのか。
仏教とは何か。
宗教とは何か。
仏教やインド思想をごちゃ混ぜしたようなオウムとは何だったのか。
この問いが世間ではブラックボックスとなっている。
これらの問いが展開されるのが本書に惹き込まれた理由でもある。

ちょっとネタバレをすると事故死した僧侶がオウムで瞑想の体験をつんでたことから
後半から仏教とオウムの比較,オウムは宗教なのかという議論が展開される。
読めば分かるがココらへんの議論というのは
どうとでも取れるところに仏教の難しさがあることが分かる。
違うと言えば違うだけの理由はあるし,そうでないともとれてしまう。

偽書という言葉があるが,仏教で偽書を認定するのは難しい。
道元なんかは見性を記してある経典を偽書だと厳しく処断し見性などないとする。
そもそも正典をはっきりと意識しなかったことが仏教が抱える問題ではある。
仮に釈迦の説法だけを正典とするなら大乗経典はどうなのと。
口伝が含まれてる可能性は実はあるし,逆に大乗非仏説というのもある。
だからこそなのだが仏教では信が重要なのだと僧侶達は言う。
道元は自らは仏弟子であり宗派などないと言いきった,その意気やよし。
そうは言っても宗門の数は今や数万にのぼるわけだ。

まぁここらへんも仏教なら戯論に陥るなと一蹴してしまうのかもしれない。
現に本書でも熱心に僧侶の中で議論が交わされるが結局まわり回って元に戻るわけだ。
合田雄一郎は,議論して結局はそれなのかという言葉からも自体が十全に表われている。
道元が最後に不戯論を持ってきたのは納得だ。
禅は仏教は言葉で伝えるとしても超言語でなければならない,
そうでなければ論理の循環に囚われてしまう。
言語を超えてしまったもの,だからこそ劇薬になりえてしまうのだが。
事故死した僧侶もこの劇薬が社会的には悪い方に効いてしまったわけだが,
それが宗教的に決して悪いと言えないのがアレだが。
それでも敢えて問うたことに意味はあったと思うし,問わせるのが宗教なのだ。
そして問いを出すのも答えるのも結局は仏でなく人間だからなのだろう。

私も主体をどうするかで哲学なんかでなく,神道でもなく,仏教に心惹かれた人間であるから
この問題というの読んでいて結構意義のあるものだった。
世代が違えども同じ時代に生まれた人間というのは同じような考えにぶち当たる。
親鸞も道元も同じような思想を見てとれるわけだが,だが両者は同じではない違う。
信というのはそうでなければならない。


この本を読んでいて玉城康四郎の「業熟体」という言葉を思い出した。
これもあの問いに対して1つの答えなんだろうか。

まぁ私も黙って坐ろうという体だ。
啓蒙はどうする????分かんねえよ。

☆☆☆☆

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  2. 本 ☆☆☆☆
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