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和書・マンガの評価と感想の記録。

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[読書メモ] 大江健三郎作品をいろいろ読んだ

読んだのは
・万延元年のフットボール(1967年)
・同時代ゲーム(1979年)
・キルプの軍団(1988年)
・取り替え子(2000年)
・M/Tと森のフシギの物語(1986年)
・憂い顔の童子 (2002年)
・さようなら、私の本よ! (2005年)
(この順に読んだ。)




私の生まれ故郷と大江健三郎の生まれ故郷が比較的近い?ということもあり,
いつか大江健三郎の作品は読まないといけないなという使命感?の
ようなものを感じていたので取り敢えず色々読んだ。
我ながらよくこれだけ読んだもんだ。
(読んだのは全部今年になってから。)
全部長編だし,最初はスムーズに読むことが出来ず四苦八苦したが
それは3冊目くらいには慣れた。
恐らく2番目に読んだ同時代ゲームのおかげだと思う。
これが読みにくさMAXだったので,他の作品が格段読みやすくなった。
さてどういう風に話していこうか,始めは読んだ時系列順に話そうと思ったが
それだと今感じている感想を伝えることが出来そうにないので
ごちゃまぜにいくことにした。読みにくいのは許してください。

まず「M/Tと森のフシギの物語」。
これが大江作品に度々出てくる,森の歴史と神話をほぼ最小構成で書いてる。
例えば,壊す人やオシコメ,亀井銘助,五十日戦争などだ。
ここらへんが頭に入ってないと読むのがツライと思う。
だからと言ってこれを進めるというのも,私はそんなにおすすめしない。
つまり歴史と神話の残り2~3割の違いから,私が読んだ初期~中期の長編
「万延元年のフットボール」や「同時代ゲーム」,「M/Tと森のフシギの物語」が
生まれているということになる。
ちなみに後期ではそれがほぼ逆転している。
この神話と歴史,それ以外の差をどう読むかが評価の別れるところになるのだと思う。
「M/Tと森のフシギの物語」では大江健三郎と長男である光やら家族が
モデルにしているキャラクターが出てくる。
「万延元年のフットボール」や「同時代ゲーム」と比べてより
リアルっぽい私小説になっている。
ここで私小説という言葉を使ったが,基本大江健三郎の小説は私が読んだのは私小説の類だ。
彼と彼の周辺しか出てこない。
例えば「取り替え子」では,義兄の伊丹十三らしい人物が出てくる。
私はこれが現実で誰でとかいう比較分析には興味がないので,
小説の中で楽しんでいくだけにしている。

ここで私的順位を発表しておく。
万延元年のフットボール,憂い顔の童子 >キルプの軍団≧取り替え子・さようなら、私の本よ!>M/Tと森のフシギの物語
(保留:同時代ゲーム)

「M/Tと森のフシギの物語」が一番低いのは読む順番が悪かったことが多い。
森の歴史と神話を先の本で読んでいて,これまでの中で比較的分かりやすかったというのはあったが
整理する程度という感じだった。だが最後の祖母と光との話は素晴らしかった。
「取り替え子」「さようなら、私の本よ!」だがこれは「憂い顔の童子」を含めて3部作となっており,
初期短編と「万延元年のフットボール」「同時代ゲーム」の評価が高い中で,注目を浴びている後期大江作品だ。
「取り替え子」は先に行った通り伊丹十三の死を受けて書かれたとされている。
驚いたのはこれらの作品は森の歴史や神話の比重が圧縮され,それ以前の物語と比率が逆転していて
彼の小説の面白さが森の歴史と神話だけでないというのを再確認することができる。
「さようなら、私の本よ!」では三島由紀夫について言及されており,
これは私小説の醍醐味だといえ,読み応えはあることは間違いない。
三島由紀夫と大江健三郎ってのは10歳差,こう考えるとすごい。
石原慎太郎も三島由紀夫とは親しかったし,
こういうの作品を書いてくれるのに私小説というのは最高だろう。
「憂い顔の童子」についてだが,私はこれが3部作の中で一番面白いと思った。
内容は大江健三郎がモデルの主人公・古義人が生まれ故郷に帰ることになる。
これは私がもっとも読みたかったものだ。
大江健三郎は森の歴史と神話を言ってきたが,
彼自身今故郷との関係という話はほとんど出てこなかった。
故郷に残っている祖母・母などの家族については出てくるが
故郷の話をすることはほとんどなく,この本ではそれが焦点となっている。
しかも「万延元年のフットボール」と同じような物語の面白さを私は感じた,もっともマッチしたという感じか。
「キルプの軍団」についてだが,私が読んだ作品の中で時系列的にこれ以降の作品には
世界文学の作品をネタにして話を進める場合が多くなる。
「キルプの軍団」ではディケンズの「骨董屋」を,「憂い顔の童子」では「ドン・キホーテ」などを
ネタにして話をすすめることが多くなったが,それらのネタの使い方がもっともうまかったのは「キルプの軍団」だと思う。
「骨董屋」をもとにドストエフスキーが創作した「虐げられた人びと」も登場し
これらの比較などで物語の構成が見事なものになっている。
「万延元年のフットボール」だが,これは私が読んだ大江作品の中でもっとも彼の以降の私小説らしくない作品だ。
荒削りというかこれ以降作品と比べると方向性がまだ曖昧な気がするが,もっとも物語してる作品だと思う。
私はこれのラストがはじめて読んだ時よく分からなかったが,
「取り替え子」を読んで気づき,このラストの良さに再度読みなおしたほどよかった。
「取り替え子」の中に最後にこういうものがある
『もう死んでしまった者らのことは忘れよう、生きている者らのことすらも。
あなた方の心を、まだ生まれてこない者たちにだけ向けておくれ』
私という人間は生死を始めと終わりにするのでなく,
その先へと続けるような彼の思想,
その再生というべきものに気づき,「万延元年のフットボール」でさらに感動した。
そして「同時代ゲーム」,これは評価を保留にしたい。
なぜなら読んだ当初これが私の評価の最下位だった。
これが私が読んだ大江作品の中で一番難解だと思った。
(私は一人語りが苦手ということもある。)
これは大江作品の中で2番目に読んだんだが,いくつか読了後これまで読んだ作品のことを加味すると
かなり評価が違うのではないかと思えるところがあったからだ。
まぁ再読しても最下位のままという可能性はあるんだが。

別に言わなくてもいいかもしれないが一応。
読んでいった時はやけに政治思想的な匂いがする小説を書くよなと思ったが,
これはこの時代の作家というものはだいたいそういうもんだ。
安保闘争もあったしベトナム戦争もあった。
石原慎太郎も開高健もベトナム戦争取材したりしてる。
三島なんてバリバリの保守だったし,言わずもがな。
ここらへんの世代は文学と政治なんかに関わっているのが当然で,
対して私達は戦争・闘争から遠くはなれてしまった世代だ。
そういうわけで,私は彼の政治態度に興味はない。

ここらへんで雑感を終えたい。
もしかしたら以後個別に感想を書くかもしれないが,
取り敢えず今はこの辺りで。
Amazonのリンクはって思ったが,大江作品の品切れ多いな。
ノーベル文学賞を受賞した作家という感はまるでない。
まぁ私もたまたま読んだだけだしね。

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  1. 2013/10/08(火) 00:05:56|
  2. 読書メモ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

私は、一冊だけですが……

『万延元年のフットボール』だけ、以前に読みました。
衝撃的な最終部ですね。
現実の大江氏と伊丹十三さんとの関係から類推してしまって、どうにも後味が悪かったです。
難解な漢字を多用しているので、一般の読者を寄せ付けない。だから探られにくい、ということですね。
『スーパーの天皇』などのメタファーもあって、奥深いことは奥深いです。
  1. 2013/10/08(火) 03:52:24 |
  2. URL |
  3. 山雨乃兎(やまめ・のうさぎ) #-
  4. [ 編集 ]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2013/10/08(火) 16:43:51 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

Re: 私は、一冊だけですが……

> 『万延元年のフットボール』だけ、以前に読みました。
> 衝撃的な最終部ですね。
> 現実の大江氏と伊丹十三さんとの関係から類推してしまって、どうにも後味が悪かったです。
> 難解な漢字を多用しているので、一般の読者を寄せ付けない。だから探られにくい、ということですね。
> 『スーパーの天皇』などのメタファーもあって、奥深いことは奥深いです。

山雨乃兎さん コメありがとうございます

伊丹十三は私が小学生の時に亡くなったんで,
ほとんど記憶にないんですよね。
ロードショーで「名匠・伊丹十三がおくる」なんて紹介があるくらいしか。
「取り替え子」読んだ時もフィクションとして読んだ割合が多かったですね。

読みなれれば結構いけるようになると思います。

  1. 2013/10/22(火) 22:59:51 |
  2. URL |
  3. ヒメキリン #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

HIRO1さん コメありがとうございます

後期の仕事と言われている,「宙返り」以降は結構読みやすいですよ。
500p以上あるけど。
  1. 2013/10/22(火) 23:24:56 |
  2. URL |
  3. ヒメキリン #-
  4. [ 編集 ]

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